乙姫.迷宮Smile 10話、11話~あん 作~



10話
ヒラメは竜宮の書庫にて古い文献を漁っていた、、、

地上人をこの竜宮にこさせる方法はないものかを調べているのだ、、、

自分の記憶するところや
これまで見聞きした知識の中では、今までに地上人が竜宮を訪れたことなどは無い、、、

しかし海の世界の歴史は非常に長くて奥深い
なにやら手立てはあるかも知れない、、、

ヒラメは夜を徹して調べた。

そして、、、
ある文献に、これは、、、というものを見つけ出した

そして、乙姫のもとに行き自分の思うところを告げたのだった。

乙姫「玉手箱に魂を預ける、、、」

ヒラメ「はい、この手法は、太古、竜宮の者が天上界へ出て行かねばならなかった時に用いられた方法で天上界では変化の術がうまく働きませぬゆえ、命に危険が及びませんよう、、、竜宮よりあの世界に向かうには、いったん魂を玉手箱に預け入れ、、、それを携帯して向かうと書いてありました」

乙姫「玉手箱に、そのような使い方があるとは、、、しかし、それは地上人にも可能なのか?」

ヒラメ「、、、それは、やってみないことには、、、これにその術の施し方が記されております、姫もお知りおきくださいませ」

ヒラメが乙姫に文献を手渡した、、、乙姫はパラリパラリとページをめくった、、、

玉手箱に魂を預けられれば人にとっての異世界であるこの竜宮でも、我々と同じように過ごすことが可能かもしれない、、、しかし、それを今までに試したことは無いのだ、、、賭けにでるしかなかった。

乙姫「、、、わかった、とりあえず試そう、ウミガメの恩返しを浦島殿が聞き入れたなら、玉手箱に魂を移す術をヒラメがかけてみてくれ、、、そして、海中に入れてみて、、、様子を見よう、、、術が叶わぬようなら、、、すぐに地上にあがらせよう。そうすれば命は落とすまい」

ヒラメ「御意」

乙姫が何かを念じた
すると、その掌に、黒い塗りの箱が現れた、、、

美しい塗りの箱の蓋には
螺鈿のきらびやかな細工が施されていた

玉手箱だ
それは竜宮の家宝のひとつであり大切にされている、、、
数はいくつかあり、どれも非常に美しいが
使い道はあまりよくしられていない
多くの者が未だ玉手箱についての使い道、謎を探っていたのだった。

乙姫「浦島殿の魂の入れ物としてはこの玉手箱を使おう、美しい箱だ、、、」

それは玉手箱の中でも乙姫がいちばんに気に入っているものだった

乙姫はヒラメに玉手箱を手渡し、ウミガメと共に地上へと向かわせた。

ーーーーーーー

ヒラメは玉手箱を手にすると、ウミガメを伴い竜宮より外の海に出た

ウミガメ「ヒラメ様がご一緒してくださって心強い」ニコリと笑ってウミガメが言った

ヒラメ「わたしも、そなたについて行けてよかったと思っている」

ウミガメ「わぁ!まことですかーっ!」
きゃは。と、はしゃいで見せるウミガメに、、、

ヒラメはあまり愉快ではないという面持ちで返した

ヒラメ「そなたはおっちょこちょいゆえ、、、このような大事な事柄にはわたしがいたほうが良いに決まっているからな」

ウミガメ「、、、えーっ、なんですかーっそれーー」

ヒラメ「だいたい、そなたがボンヤリし、人の子などに捉えられてしまうから、、、事態はこうなった、、、ちがうか?」

ウミガメ「、、、うぅ、、、確かに、、、おっしゃるとおり、、、(しょぼん)」

項垂れるウミガメをチラリと見て、ふっ、、、と口元を緩めたヒラメは
ウミガメの頭をくしゃっと撫でて

ヒラメ「今度はしくじらぬよう共に心して参ろう、、、心配ない、わたしがいる」

余裕たっぷりに
そう言うヒラメにウミガメは「はい!」と満面の笑みを返した。

地上に出るのはそれなりに危険が伴う、、、
そのままの姿ではいられないので、まず変化の術を使い人の姿になる。

ウミガメは14、15くらいの少女の姿になった

変化には大変な力を要する、長く変化していられるには相当な術者でなければならなかった
ウミガメにはまだ、そこまでの実力がなかったのだ

だから、浜辺で子どもに捕まってしまったあの日は、、、迂闊にも、変化していられるタイムリミットを見誤ってしまった、、、

変化が解ける一歩手前、、、命からがら、浜辺にたどり着いた

そして、岩かげでそっと
少女の姿からウミガメに戻った、、、

ずいぶんと力を使ってしまったため、小さな小さなウミガメにしか戻らなかった、、、

そして、気を失ってしまったのだ、、、

そこへ、子どもたちがやってきて、不幸にも見つかってしまった。

縄でぐるぐるまきにされ

ぶらぶらと吊るされたウミガメは、振り回されたり、あちらこちらをつつかれたりした

ただでさえ、体力を消耗しているというのに、、、
このままでは命が危なかった、、、

そんな時、、、

「これ、、、童子たちよ、それは何をしておるのだ?」

浦島があらわれた、、、

つづく



11話
朦朧とする意識の中で
ウミガメは声の主の方を見た

少し視界が霞むが
凛々しい若者が、子ども達に話しかけていた

若者「そのカメをどうするのだ?連れ帰り世話をするのか?」

一人の子どもが言った

子ども「こいつぁ、ウミガメだ、連れて帰ったってうちじゃ育ちっこねーよ、ただ、今、一緒に遊んでるだけだい!」

若者は子どもの側にもっと近寄るとしゃがんで
目線を合わせた
そして、優しく、こう話しかけた

若者「見ろ、、、亀は縛られ連れ回され、もう元気も無さそうだ、、、お前たちが言う一緒に遊ぶ、、、というのは仲間を苦しめたりすることなのか?」

決して咎めるふうではない、優しい穏やかな口調だった

子ども「仲間を苦しめたりなんかしねーよ!だけど、こいつは、ただの亀じゃねーか、仲間じゃねーし、、、」

すると、若者は少し悲しげな表情になり言った

若者「ただの亀というが命ある者ではないか、、、命はお前たちにもわたしにも、この小さき亀にも等しく宿っているのだ、そして、この世に生きている者は皆、仲間だとは思わぬか?
命ある者を遊びでどうこうして良いものではないぞ、、、童子たちよ、分かってくれぬか?亀を逃がしておやり」

子ども達は顔を見合わせて、少し閥が悪そうにした、、、

しかし、大人に諭されるのは癪だったのか

子ども「じゃ、兄ちゃんに売ってやるよ!兄ちゃんがこいつを買って好きにしたらいいじゃねーか!」
と生意気なことを言った

若者はフフッと微笑むと

若者「承知した、、、では、そなたたちから亀を譲り受ける、あいにく、わずかしか持ち合わせておらぬが、、、あめだまくらいは買えよう、、、これで亀を譲ってくれぬか?」と、子ども達に僅かなお金を渡した

子どもは、なんだよ、しけてんなーーこれっぽっちしかないの?
いい着物着てるけどハッタリかよー
、、、と、悪態をついていたが、、、
若者には子ども達はもう亀を手放す気でいることは分かっていた

ただ、すんなり手放す踏ん切りがつかないだけだ、、、キッカケをつくってやった。

「すまんな、、、頼む」深々と若者が頭を下げると

子ども達は仕方ないなぁと言った表情をつくり
縄でぐるぐる巻きにした
ウミガメを差し出した。

そして、よし、飴買いにいこーぜ!と渡した金を握りしめて走って行ってしまった。

子ども達が去っていったあと、若者はウミガメを縛る縄を丁寧にほどいてやると、、、
浜にそっと下ろした

若者「、、、ウミガメの子よ、もう、捕まるなよ、、、達者でな」
と声をかけた、、、

ウミガメはそそくさと海に向かう、、、残った力を振り絞り前に進んだ
竜宮に戻りさえすれば力も回復する、、、あと少し、、、

「若様ーーこちらへいらしたのですねーーお探ししました!奥方様と一朗太様は先にお屋敷にお帰りになりましたよ!」と別の人の声が近づいてくるのが聞き取れた。

若者が答える
「すまん、少し気晴らしに一人散歩していたのだ、もうそちらに戻ろうとしていたところだ」

若者にかけよってきた男は肩で息をしながら
言った

男「いけませんよ浦島家のご嫡男がお一人になるのは!何かあったらどうなさるのですか!奥方様もご心配なさっていました!離れるなら一声おかけください!」

ウミガメは波に運ばれながら、二人の会話を聞いていた、、、

浦島家嫡男、、、
あの若者は領主の子か、、、
ウミガメは海中へ潜った
意識を保っていられるうちに、、、
早く、竜宮へ、、、

あの時は本当に危なかったと、浦島に助けられた日の事を思いだしていた。

つづく

12話、13話は、来年1月の中旬あたりに掲載いたします!
皆様、本年、たくさん
コラム読んでくださりありがとうございました!
また来年度もコラムチーム楽しく活筆いたしますので~
よろしくお願いいたします!!