乙姫.迷宮Smile 14話、15話~あん 作~



(14話)
あの日、、、
浦島が玉手箱の煙と共にかき消えてしまった日

乙姫は竜宮で愛しの君、浦島太郎を待ちわびていた、、、

浦島は少しだけ地上を見たら、また、必ず戻ると言った、、、

、、、なのに、胸を締め付けてくるこの不安感はなんだろうか、、、

嫌な予感が押し寄せてくるのだ、、、
乙姫は頭上の先の先にある、地上の世界に思いを馳せた、、、

あぁ、浦島太郎様、、、
早くお帰りになってください、、、

乙姫は祈るように瞳を閉じた、、、

しかし、、、
乙姫の耳に飛び込んできたのは、信じがたい訃報であった、、、

浦島太郎が玉手箱を自ら開いて煙とともにかき消えた。。。

ーーーーーーーーーー

力なくよろめくウミガメをヒラメが支えながら
乙姫のいる玉座の間へと長い廊下を歩いていた、、、

ウミガメ「、、、ヒラメ様、わたしを殺してください、、、」

ヒラメ「バカな、、何を言う、、、」

ウミガメ「竜宮人は自害で死ねませんから、、、寿命がくるか誰かに殺められるか、、、乙姫様に合わせる顔がありません、、、どうか首を跳ねてお届けしてください」

ヒラメ「ウミガメ、、、気持ちは分かるが浦島様があのようになったのはそなたのせいではない」

そんなヒラメの言葉をかき消すようにウミガメは叫ぶように言った

ウミガメ「いいえ!!わたしのせいです!!わたしがお側にいたのに!お止めできなかった!!!!あぁ、、、もとはと言えばわたしが浦島様を乙姫様に引き合わせたのがいけなかったのです!!
死んでいればよかった!あの日、浜辺で子どもらに捉えられて、、、わたしがあの日死んでいれば浦島様も乙姫様も、、、この、、、ようなことには、、、うっうっ、、、」

嗚咽するウミガメをヒラメが抱きしめた

ヒラメ「、、、ウミガメそなたのせいではない、、、」
ヒラメはそう繰り返し言ってはウミガメの背を優しく撫でた。

廊下にウミガメの悲痛な泣き叫びがこだましていた、、、

一方、、、
乙姫は玉座の間にたった一人閉じ籠っていた

不思議と涙が一滴も沸いてこない、、、

頭が真っ白だった
心は大きく裂けて、、、その傷からダラダラと何かが漏れ出ていくようだ、、、

今は空になった浦島の魂を預け入れていた玉手箱に触れた時、、、
地上に戻った浦島に何があったのか、、、全てが読み取れた、、、

涙も出ない声も出ない
愛しいあの方がいなくなってしまった。

実感が湧かない、、、

浦島太郎様、、、あなたはほんとに消えておしまいになったのですか?

玉手箱を見つめながら、乙姫はボンヤリとしていた

浦島太郎とはじめて会った日のことが思い返される、、、

ウミガメとヒラメに伴われて浦島は竜宮へやってきた

乙姫がこの玉座の間で迎えると
二人は目があった瞬間に互いに恋に落ちた、、、

あの電流が身体中を一気に駆け巡るような想い、、、

あのような気持ちになるなんて、、、
わたし達が出会ったのは
きっと生まれ出でる前から決まった運命だったのだ、、、と、乙姫は思う。

しかし、竜宮人と地上人、、、結ばれてはならなかったのか、、、
このような顛末になろうとは、、、

でも、、、離れることなどできなかった

浦島太郎様、、、
あなたを愛さずにいられませんでした、、、

あなたの優しさに甘えていつまでも地上に返さず、、、わたしの元に繋いでしまった、、、

あなたは、、、
どうだったのでしょうか、、、わたしといて、幸せでしたか?

「乙姫、、、愛している」
空耳か、、、浦島太郎の声が聞こえたように感じた。

ポタリ、、、と涙が溢れて落ちた、、、

玉手箱の上で乙姫の涙が光って揺れる、、、

沸き上がってこないと感じていた涙は、、、いったん溢れると、今度は止めようがなく次から次に流れ落ちた、、、

ーーーーーーーーーー

ひとしきり泣き叫び、、、少しは落ち着いたのか、、、ウミガメはヒラメから身を離すと

また、玉座の間に向かってよろめきながら歩きだした、、、

すかさずヒラメが傍らに寄り添い支えてやる

ヒラメ「ウミガメ、、、無理をするな、、、姫にはわたしが一人でお会いしてもよいのだ、、、」

ウミガメはふるふると首を横にふった

ウミガメ「、、、いえ、、、合わす顔がないなどと、、、逃げでございました。乙姫様にきちんと浦島様の最後をお話し、お詫びせねば、、、」
蒼白な面持ちをひきづりながらウミガメは廊下を進んだ、、、

そして、やっとのこと
玉座の間にたどり着いた、、、

ヒラメが中に向かって話しかけた

ヒラメ「乙姫様、、、ヒラメとウミガメにございます。お目もじ叶いますでしょうか?」

しかし乙姫がいるはずの玉座の間からはなんの返事もかえされなかった

つづく


(15話)
「失礼!」
ヒラメが玉座の間の扉を無理やりに開いた

何度呼びかけても、中にいるはずの乙姫から応答がないからだ、、、

ヒラメもウミガメも嫌な予感がした

バンっ、、、と扉が勢いよく開くと玉座の間から
大量の水がこちらめがけて溢れ出てきた

ヒラメは咄嗟に掌を向かってくる水の渦にかざすと自分たちがいる方と逆側の通路へ水の流れを変えた

ヒラメ「乙姫様!」
ヒラメは水の流れを変えるとほぼ同時に玉座の間に飛び込んでいた

ウミガメもヒラメの後につづく

玉座の間は大量の水で溢れて、水があちらこちらで、渦を巻いて暴れていた、、、
いや、元々、海中なのだから水の中だ、、、しかし、このように、激しく竜宮の中で水が渦を巻くなど、今までに見たことがなかった

ヒラメ「姫!ご無事ですか!?」

いつも、乙姫が腰掛けている玉座に目をやると
玉座の乙姫を隠すように
ザザっという音とともに
大きな水柱が上がった

その勢いは、ヒラメとウミガメにこちらへ来るなと言っているように感じられた、、、

ウミガメ「姫様、、、お怒りなのですね、、、申し訳、、、ありません、、、」

ガックリと床にひれ伏し
乙姫に詫びるウミガメ

ややして、、、
水柱の向こう側から
乙姫の声が聞こえてきた

乙姫「、、、怒っている、、、しかし、それは私自身にだ、、、ウミガメ、そなたにはなんの思いも抱いておらぬ」

ウミガメ「、、、姫、、、」

乙姫は自分が浦島をこの竜宮にとどまらせたせいでこんなことになってしまった、、、と
自分自身に怒りを覚えると言った。

それを聞いてウミガメはハラハラと涙をこぼした
乙姫の心中を察するとヒヒリヒリとした痛みが胸に広がった、、、

ヒラメが口を開く

ヒラメ「姫!ご心中いかばかりかと存じますが、、、落ちついてください、、、この逆巻く水をお鎮めくださりませ!」

乙姫からの返答はなく
渦巻く水の勢いは変わらなかった

ややして、乙姫がまた言葉を発した

乙姫「、、、わたしは、疲れた、、、何も考えられぬ、、、この渦巻く水を止める気力さえ出ぬ、、、勝手をしてすまんな、、、わたしも解放しておくれ、、、」

ヒラメとウミガメが同時にバッと顔を上げた

「姫!!!!」

何かの術を自らに施したのだろう、水柱の向こう側で乙姫の姿がぱぁんと光を放つと、一握りの玉のようになり、、、そして、フイっと消えた

乙姫の光が消えた瞬間に渦巻く水は収まり、水柱も消えた

辺りはいつもと同じ静寂に包まれた玉座の間であった

ヒラメとウミガメは慌てて玉座へ駆け寄った

そこには玉手箱の中で
ゆらゆらと光を放つ
玉がひとつ、、、

乙姫の魂の姿だった

ウミガメ「姫様!」

ヒラメ「、、、、、」

乙姫は自らに術をかけ、
魂を玉手箱に収めたのだ
ヒラメとウミガメが乙姫の魂を見た直後、蓋がひとりでにササっと被さってしまった。

そして、どんなにしても
玉手箱は固く閉じたまま
開けることができなかった。

魂は、玉手箱の中に在るのは分かっているが、、、魂と別れた乙姫の身体はどこにも見当たらず、方々、考えうる限りを探し尽くしたが、、、未だにみつかっていなかった。

ーーーーーーーー

俺「、、、乙姫、、、玉手箱の中で眠ってるのか?」

俺はヒラメにそう聞いた

ヒラメ「、、、まぁ、そんな感じです。意識を凍結させているような状態でしょう。こちらからいくら呼びかけても聞いてはくださいません、、、」

俺は乙姫の魂が閉じ籠り続けている玉手箱をじっと見つめた

あの中で乙姫はどんな夢を見ているのだろうか、、、

ヒラメ「近年、海はほんとに酷い状態です、、、乙姫様が海を浄化してくださる力を発揮されていませんし、、、その上、人がどんどん汚してゆく、、、このままでは、崩壊するのも間近でしょう、、、海の世界が崩壊したら、、、」

俺「、、、どうなるんだ?」

ヒラメ「海流が大暴れし、全てを飲み込み、一度、全てが無に期されます、、、生き物はおそらくほぼ死に絶えると言うことです」

俺、、、えーーーっ!?
そんな、ジョーダンじゃない!

俺「なんとかなんねーの?」

ヒラメ「、、、はい、そこであなた様になんとかをお願いいたします」

俺「は?だから、なんで俺が?」

ヒラメ「こちらへ、、、」
ヒラメは玉手箱の置かれたテントのようなものの脇を抜け、、
その後ろ側にまわった
そして、こっちに来いと手招きしてくる、、、

俺は黙ってヒラメのいる方に近づいた

ヒラメ「これをご覧ください、、、」
そう言うと取り付けてあった、何かしらのひもを力強く引き下げ分厚いカーテンを両開きにした。

カーテンの中から現れたのは、一枚の絵だった
肖像画、、、というものだった、、、

そこには、黒髪が長く豊かな美女と、、、

ん?ん?

俺「、、、お、、、俺っ!?」

美女と並んで描かれた絵姿の青年は、、、
俺だ、、、髪型なんかはまったくちがうけど
これ、、、

俺「俺、、、だ、、、」

ヒラメは驚く俺を見て言った

ヒラメ「こちらが浦島太郎様です、、、そう、あなた様は生き写しだ、お姿も、、、お声も浦島太郎様そのものでいらっしゃる」

えーーーーっ
どゆことーーーっ

俺は目を白黒させながら
肖像画の浦島太郎を見つめた

つづく

16話、17話は2月中旬頃掲載予定です~