乙姫.迷宮Smile 16話、17話~あん 作~



(16話)
ウミガメはかなり慌てていた

今朝、信じられないものをみつけたのだ

急いで竜宮に帰り
ヒラメにこの事を話したかった

そして、今夜にでも
また、もう一度、、、

今までのどんな時よりもウミガメは早く早く、、、と水をかいて海中深くに潜っていった

ヒラメは今日も日課よろしく、玉座の間の乙姫に話しかけていた

正確には、乙姫の魂が閉じ籠っている
玉手箱に向かって、、、

ヒラメ「姫様、、、おはようございます。本日のご機嫌はいかがでございますか?」

玉手箱からはなんの返答もない、、、

しかし、ヒラメは話しかけ続けた、、、

ヒラメ「、、、昨晩、鯛殿が姫のご生誕祭での、お召しものを仕立て終わったと、、、わたしに見せてくれましたよ、、、今年は艶やかな珊瑚色の着物です。鯛殿の仕立ては、いつもまことに見事ですね、、、姫、、、今年こそは、、、姫に袖を通していただきたい、、、皆、願っておりますよ、、、」

シーンとした沈黙が広がるばかり、、、
玉手箱は物言わず、ただ、そこに在るのみだ、、、

と、、、そんな静寂を打ち破る、猛烈な音をたて
扉が開く音がした

ヒラメ「はしたないぞ、ウミガメ、、、」

ヒラメはウミガメだと
振り向きもしないのに
入ってくるなり分かったようだ、、、

ぜぇ、、、
はぁ、、、

よほど急いだらしくウミガメは肩で息をしていた

ウミガメ「、、、ヒラメ、、、様、、、みつけました!」

ヒラメが、何を?と目で問い返すと

ウミガメが言葉を続けた

ウミガメ「浦島太郎様です!!いや、あれは、生まれ変わりかも?そうとしか思えないほどに浦島様に生き写しの若者に浜辺で出会ったのです!」

ヒラメ「なんだって!まことか!!で、どこのどなただ?」

ウミガメ「、、、あーーー、、、しまったーーーっあんまり驚いて、、、お名前などお聞きするのをウッカリ、、、」

ヒラメ「、、、、阿保ぅ」

ヒラメがウミガメを冷たく一瞥する

ウミガメ「わぁーん、ごめんなさい、ヒラメ様、すぐ調べますぅ!そんな冷たい目で見ないでっ」

そういうとウミガメは玉座の間からピュ~っと逃げるように出ていった

ウッカリ者でほんとにそそっかしいが、、、やるべき仕事はこなす奴だ、、、

その浦島様に生き写しの若者についてはウミガメの調べを待つか、、、

ヒラメは、再び玉手箱に視線を送ると
フッ、、、と口元に笑みを浮かべた

「姫、、、ようやく、眠りから覚める時がくるやも知れませんよ、、、」

そう言うと玉座の間を後にした、、、

ーーーーーーーーーー
わたし
山野ゆかり、、、
息子が一人いるシングルマザー
小さい小さいって思っていた息子が今年から高校生になった
あっと言う間に背も抜かされたし、、、近ごろじゃ、思い荷物運んでくれたり、、、帰りが遅くなると自転車飛ばして迎えに来てくれたり、、、
ずいぶん、頼りになるようになってきた、、、

あぁ、今日も仕事、遅くなっちゃったなーー
しまちゃん、きっと、お腹すかせてるわね、、、

わたしはスーパーに寄って、適度サッとつくれそうな食材を見つくろって
レジに並びに行こうとした、、、

「おや、ゆかりさんじゃない?」背後から呼び止められて私は立ち止まった

私「あ!田中さん、、、お久しぶりです!えっと、、、いつぶりかしら?」

田中さんは以前わたしがとてもお世話になった方だ、、、

田中「、、、たしか、志麻太郎くんが中学に入るときのお祝いの席に呼んでもらって、、、それ以来かな、、、」

私「あぁ、そうでしたね!すみません、スッカリご無沙汰してしまって、、、志麻太郎、高校生になったんですよー」

田中と呼ばれた白髪の男は、おぉ、それはそれは、、、と目を細めた

田中「元気にしているかい?志麻太郎くん」

私「はい!めちゃめちゃ元気!もう元気だけがとりえみたいなもんですよー」

田中「それは何より!久しぶりに会って話がしたいなぁ、今度、また、ゆっくり施設においでよ、、、」

私「ありがとうございます!そういえば志麻太郎ったら、こないだ、自分になんで、こんな変な名前つけたんだーー?とか言ってきたんですよ、いい響きのなまえじゃない!って言ってやったんですけどね、田中さんが一生懸命、名前の漢字考えてくれたことも話したとこだからー、そんな話も、また、志麻太郎にしてやってくださいね!」

じゃあ、また、、、と
私は田中さんに告げると
急いで買い物を済ませて帰宅した

マンションの部屋の鍵を開けようとしていると
中から、話し声が聞こえる

あら、志麻太郎、、、
友達でも連れてきたのかしら?

私は鍵をあけて玄関に入った、客らしき人の靴はなかった、、、
あれ?なんとなく違和感を覚えた、、、
そして、息子に呼びかける

「ただいまーー志麻ちゃん、いるんでしょ?」

すると、、、

「母さん!来てくれ!」
なんだか、少し緊迫した感じのする声で息子が私を呼んでいる、、、

「え?なに?なんかあった?」

息子の部屋に向かった、、、

息子以外にもやはり誰かいる気配もする、、、

「志麻太郎、誰か来ている、、、の、、、え?志麻太郎、、、」

居なくなっていた、、、
確かに、私を呼ぶ声がしたし、部屋にいる気配を感じていたのに、、、

息子の部屋に入ると
そこはもぬけの殻だった

どうゆうこと!?

窓が空いていてカーテンが風に揺れている
まさか、落ちたんじゃ!!

思わず駆け寄り窓から下を覗きこんだ、、、

いない、、、ほっ、、、
よかった、、、ここは
マンションの5階だ、落ちたりしたらダダでは済まない、、、

え、、、と、、、
じゃ、一体、あの子はどこへ、、、

私はボーゼンと部屋に立ち尽くしていた、、、

つづく



(17話)

俺、、、
今、けっこうな大役を背負わされた気がしてる

ヒラメから浦島太郎に生き写しだと教えられた俺は、さらにこう言われたのだ

ヒラメ「その浦島様と同じお姿、お声ならば、乙姫様のお心が動くやも知れません、、、どうか、玉手箱の中の姫に出てきて下さるように説得していただきたい!」

そう、俺は
玉手箱から乙姫引きずり出すために恩返しだーなんだーと言われて、、、まぁ、結局無理矢理にさらわれてきたけど、、、
この竜宮へ連れてこられたワケ、、、

俺がここにきて
もうすぐ2日過ぎようとしてるらしい、、、

竜宮での2日って、、、
確か、、、地上の200日、、だよな、、、、つーことは、俺は失踪してから
もう半年以上過ぎてるワケか!?

トホホ。。。
そうゆうの考えると
マジ、真っ暗な気分になる、、、ガックリ項垂れてると

ウミガメが玉座の間に現れてこう言った

ウミガメ「しまたろう様!!なーに項垂れてるんですかー?お腹すいちゃったのかなー?」

ウミガメは休んで心身ともにかなり回復した様子だ
重々しい雰囲気がとれてる、、、
しかし、この軽々しい
ノリも嫌だ、、、

俺「、、、あのさ、、、これ、、、玉手箱から姫さん出て来なかったら、、、俺、、、どうなんの?てか、、、いつまでに出す!とか期限あるわけ?」

ウミガメは、はて?という表情になった
そして、、、

ウミガメ「うーん、そうですね、、、特に期限決めてませんけど、、、ゆっくりやってくださいな!って言って差し上げたいですけど、私たちも、まぁまぁ焦ってるんで、、、できたら、パパっとやってもらえた助かります!!あーーそれから、あなたがいくら呼びかけても姫が外にお出にならなかったら、、、その時はぁ、、、まぁ、そのうち地上に帰してさしあげますよ!」にっこり。

、、、て、、、
なーにが、にっこり。だ!!
そのうち、なんて言ってたら、地上ではそれこそドンドン時間が経ってしまって、、、
俺もほんとに浦島太郎になってしまう、、、

あーーー嫌だ
それだけはなんとかしたい!!

それでなくても、もうすでに半年の俺の本来の時間が消えたんだ、、、
どーしてくれるっっ
(怒)
俺はウミガメに切々と訴えた!

ウミガメ「あーーー時間の流れを気にされているのですね!!大丈夫ですよ、しまたろう様!昔は竜宮の1日が地上じゃ100日に値してましたけど、、、浦島太郎様の悲しい一件のあと、私たちもそれについてなんとかならないか試行錯誤、あらゆる術を研究しています!!なんとですね!!地上との経過時間
差を半分にすることに成功したんです!!
素晴らしいでしよー
もしかしたら、また、地上の人と竜宮でなんらかの交流があるかもしれませんもんね、、、偉い人達が必死に時間差の研究を重ねたんです!だからね、以前よりは差もないし、、、焦らなくて大丈夫ですからね!」

以前、、、竜宮の1日が
地上では100日
今は半分になったから
1日が50日になるんだな、、、

俺、ここに来てから2日だから、、、
うわぁーーーっ
ぜんぜん、やぱ、大丈夫じゃねーよ、、、

俺、地上じゃ、失踪してから3か月以上過ぎてんじゃん、、、季節変わってるよな、、、
トホホ、、、

地上の俺周辺の環境が今頃どうなってんのかを考えると頭が痛かったが

とにかくウダウダしていてもなんにも状況は変わらないんだ、、、
なんでもいい、、、

とりあえず玉手箱に向かって話しかけてみることにした。

玉手箱にしっかり向き合って座ると

俺「おーい、乙姫さーん、聞こえてる?俺、山野志麻太郎だよ、、、なんかさ、あんたの好きな人、、、浦島太郎に俺、そっくりなんだって、、、だから、俺の顔見に出てこない?」

しーーーーーん
んんんーーーー。

沈黙、、、
応答なし、、、
玉手箱になんの変化も無し。

まぁ、そりゃ、こんな直ぐにうまくいくなんて思ってなかったよ。

俺「、、、乙姫さーんなんか言ってくれない?」

しーーーん

うーーーん

何度か呼びかけたがまったく反応無し。

そんな俺の姿にウミガメは一礼すると
部屋から出ていった様子だった。

ーーーーーーーーーー

ウミガメは長い廊下を歩いていた、、、

「カメ殿!」途中、呼び止められた

ウミガメ「鯛さん、、、」

鯛は小太りの身体を揺らしながらウミガメに駆け寄った

鯛「浦島様と乙姫様のご様子はいかがでございますか?」

ウミガメ「鯛さん、浦島様じゃないよ、、、しまたろう様」

鯛「あ、あぁ、そうでございましたね!お姿を拝見したときはもう驚きでいっぱいでした!まさに浦島様そのものです、、、しかし、別人であらせられる、、、えと、お名前は、そう、しまたろう様、、、しかし、お名前までも似ております!あのお方はきっと浦島太郎様の生まれ変わりにちがいありませんわ!!だとしたら、きっと姫様のお心を開いて下さるとわたし、そう信じておりますの!」

鯛は興奮しながら早口で喋った、、、

ウミガメ「、、、そうだね、、、生まれ変わりか、、、浦島様が、、、ちゃんと生まれ変われたなら、、、わたしも嬉しいな、、、そうだと良いですね鯛さん、しまたろう様は今、乙姫様へ一生懸命呼びかけをしてくださっておいでです。
わたし、ちょうど、鯛さんあなたを訪ねるとこでした、、、」

鯛「あら、わたくしに何かご用でしたか?」

ウミガメ「はい、、、しまたろう様にお食事を作って差し上げてほしいのです、混乱続きで気になってないみたいですがお腹も減っておりますでしょう、、、」

鯛はパッと顔を輝かせると

鯛「はい!喜んで!手によりをかけて美味しいものをお作りいたしますわ!」
そう言うと、、、廊下の奥へと消えていった

鯛への用事がすんで、、、
ウミガメは少し地上に行ってみよう、、、と思いたった

しまたろうが物凄く地上を気にしているのは分かっていた、、、

また浦島太郎のときの二の舞にだけは決してならぬように、、、

急いで様子を見てこなくちゃ、、、
もし地上でなにかとんでもないことが起きそうだったら、、、
わたしが命に変えてもなんとかします、、、

そう決心して、ウミガメは竜宮を出た。

つづく

18話、19話は3月上旬に配信いたします。