乙姫.迷宮Smile 18話、19話~あん 作~

(18話)
息子が失踪してから
3か月が過ぎていった、、、
あの子のいない時間は
こんなにも苦しく痛く感じるものなんだ、、、
ねぇ、、、どこに行ってしまったの、、、
「志麻太郎、、、」
息子の写真をギュッと握りしめた、、、
時間をつくっては
この写真を持ち
見かけた人がいないか探し回っている
もちろん警察にも届けて
あちらも捜索中だ、、、
捜索願いを出しに行ったら
警察からの事情聴取とか受けた、、、話を信じて貰えずひどいものだった。
警察官「お母さん、、、あのねぇ、、、息子さんに呼ばれて部屋に行ったらそれまでいたはずの息子さんが忽然と消えていた、、、とか、、、そんなの、どうしても、ちょっとおかしいですよ、、、」
私「でも、ほんとにそうなんです!!」
警察官「、、、はぁ」
深いため息をつくと
「ちょっと休憩しましょうか、、、」と、警察官は部屋から出て行った。
警官は事情を聞いていた部屋から出ると別の警察官に言った
警官1「、、、ありゃ、ちょっと頭の方、きてるかも知れないな、、、」
警官2「精神患者ですか?」
警官1「、、、言ってることがおかしい、、、息子が急に居なくなったって言っても今日の話しだ、、、高校生なんだし、、、明日にゃケロッと帰ってくるかも知れないのに、、、忽然と部屋から消えたなんてあの慌てようはなんだ?、、、」
警官2「家、調べたんですけど、、、たしかに、、、息子は一旦帰宅していた様子でした、、、靴がね、、、」
警官1「靴?どした?」
警官2「日頃、息子が履いてたスニーカー、その他、ほかに持ってた靴、、、全部、玄関の靴箱ん中にあったみたいで、、、息子、、、裸足で出て行ったんでしょうかね、、、まさかね、、、まぁ、母親が知らないでいた、ほかの靴、履いてったんでしょうけどね、、、それとちょっと本当に不思議で、、、マンションの防犯カメラ調べたんですが、、、帰宅した息子、、、それから母親の姿、ちゃんと防犯カメラに記録されてました、、、ですが、、、息子が出て行った姿がどこにも映ってないんですよ、、、あそこ5階でしょ、、、まさか、窓から出てくワケもないでしょうしね、、、」
警官1「、、、なんだよ!それじゃあ、母親の言うようにいきなり消えちまったのかよ、、、そんなバカな、、、おとぎ話じゃあるまいし、、、まぁ、引き続き、、、しっかり調べてくれ!」
警官2「了解です!」
ーーーーーーーーーー
志麻太郎が突然行方不明になった
田中に深夜、突然の電話がかかってきた、、、
志麻太郎の母親
山野ゆかりからだ
ゆかりとは先刻、閉店間際のスーパーでバッタリ会ったばかりだったのに、、、
あの後、一体、あの親子に何があったのだ?
田中は車のエンジンをかけると山野ゆかりのマンションを目指して走らせた、、、
マンションの部屋から出て来た、ゆかりの顔面は蒼白で痛々しかった
ゆかり「田中さん、ごめんなさい、こんな遅くに、、、頼れる人が他にいなくて、、、」
田中「いいんだよ、とにかく、ちょっと失礼して上がらせてもらうよ」
そう言って田中は玄関に入った
リビングに案内され
腰をおろした
ゆかりはそそくさとインスタントコーヒーをカップに注ぎながら
ポツリポツリと志麻太郎がいなくなったときの話をはじめた。
つづく

(19話)
田中はゆかりから、その息子である志麻太郎が突然居なくなった話をきかされ、、、
明け方、住まいへ戻った、、、
忽然、部屋から消えてしまったなんて、にわかに信じがたい話ではあったが、ゆかりが嘘をつくような人間じゃないことはよく分かっているし、、、
一体ぜんたい、何がどうなっているんだ、、、
志麻太郎は無事なのだろうか、、、酷く心配だ、、、
田中が暮らしているのは
ある民間の施設で
そこでは身寄りの居ない様々な事情の者が暮らしていた、、、
思い返すこと17年程前、、、
ゆかりはこの施設に入居してきた
渡された資料を読むと
.山野ゆかり(仮名)
推定年齢20代前半
.現在、記憶喪失状態
.身元不明
(保護の経緯)
山野ゆかりは、○○年○月○○日、△△海岸浜辺にて意識不明で倒れていたところを散歩中の女性が発見し救急車を要請。
□□病院に搬送されたが
意識を失っているのみで身体には外傷、体内の損傷などは無かったが妊娠中、推定、妊娠8周目あたり。
搬送より約一ヶ月間意識不明が続いた。
その間、警察が山野ゆかりの身元など捜索したが
名前、出身地、経歴、一切が判明せず今に至る
意識を取り戻した後、山野ゆかり本人に事情を尋ねるが、名前、年齢、出身地、経歴の一切の記憶をなくしていた。
その後、心身がかなり衰弱していたため、療養施設へ回復のため入所した。
と書いてある、、、
そして、今日、もうすぐ
現在、記憶喪失、そして妊婦、、山野ゆかり(仮名)と面談する予定だ、、、
時間が来て田中は面談室へ向かった
部屋に入ると、すでに
山野ゆかりらしき女性が
町の相談員と、ともに、ソファーに腰掛けていた
相談員がたちあがる
「田中さん、こちらが山野ゆかりさん、宜しくお願いします、、、」
田中はゆかりの方を見た
蒼白な顔をしてうつむいているが、目がパッチリとした美人だった
田中「はじめまして、ゆかりさん、、、わたしがここの代表の田中祐一です、宜しくお願いしますね」
穏やかな笑みを称えた
中年男性の方を、ゆかりはゆっくり見上げた、、、
ゆかりの瞳は不思議な色をしていた
黒いのだが、なんとなく青みがかっている
それがまた、より一層ミステリアスな雰囲気を醸し出していた
相談員がゆかりに挨拶をするよう促すが
ゆかりは、、、また、瞳を伏せてうつむいてしまった
無理もないだろう、、、
記憶喪失、、、きっと
何かとんでもなく大変な出来事が彼女を襲ったのだ、、、しかも、妊娠中、、、一体なにがあったのだろう、、、
田中「いやいや、かまいませんよ、、、楽にしていてくださいね」
緊張を解すように声をかけた、、、
入所の手続きを済ませ、ゆかりは施設の女性職員と、これから生活する部屋に向かった
田中と相談員はそのまま部屋に残る
相談員「いつも、いろんな事情の方を受け入れてくださって本当に感謝しています、田中さん」
田中「いえいえ、、、彼女、、、警察は今も身元捜索中?」
相談員「、、、はい、一応は、、、ですが、まったく手がかりがないらしいんです、ここら辺りの人間でないことはもちろんなんですけど、、、近隣の街や他県に範囲を広げても、まったく、、、彼女がどこの誰か掴めないそうで、、、外国人の線も調べている様ですけど、、、彼女、それはそれは美しい日本語を話すんですよ、、、ちょっと今どきな言い回しじゃないような、変わったかんじでもあるんですけどね、、、」
田中「、、、そうなんだ、、、不思議な話だね、、、」
相談員「、、、とにかく、何か分かり次第、またご連絡しますので、ゆかりさんを宜しくお願いします」
田中「心配いりませんよ、お腹の子どもさん共々、大事にお預かりします」
相談員は田中にペコリと頭を下げて施設をあとにした。
夕刻、、、
山野ゆかりは、ほかの施設入居者とは一緒の食卓を囲みたがらず、、、
田中が部屋に夕飯を運んでやった
コンコン、、、
ゆかりの部屋のドアをノックした
田中「ゆかりさーん、田中です、夕飯、お部屋で食べてください!開けて貰えますか?」
ややして、中からゆかりが出てきた
田中は不安を与えないように努めて穏やかな笑顔をゆかりに向けながら
夕食を乗せた盆を彼女に差し出した
ゆかりは小さな声で
「、、、感謝します」と言ってペコリと頭を下げると、田中から盆を受け取り、また、部屋に閉じこもった
彼女が心を開いてくれるまで、、、これは、なかなか時間がかかるかも知れないな、、、
田中はそんなことを思いながら、ゆかりの部屋の前を去るのだった、、、
つづく
次回は4月上旬頃、掲載予定です!